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福岡高等裁判所 昭和28年(う)3036号 判決 1954年2月19日

控訴人 被告人 李民和

弁護人 石橋重太郎

検察官 宮井親造

主文

原判決を破棄する。

本件を原裁判所に差し戻す。

理由

弁護人石橋重太郎が陳述した控訴の趣意は同人提出の同趣意書に記載の通りであるから、これを引用する。職権で調べてみると本件の記録には判決言渡調書が存在しない。尤も第九回公判調書の末尾には裁判官は判決宣告期日昭和二十八年十月二十九日午前九時と指定告知し出頭を命じた旨の記載があり又同記録には裁判官近藤慶治作成の判決原本が綴付してあり、その冒頭欄外には裁判所書記官補友松里美において昭和二十八年十月二十九日宣告と附記してある。かかる事情を綜合すると本件に付いては、とにかく第一審判決の言渡があつたことだけは認められるが前示のように言渡調書が存在しないので右言渡が果して適法な方式を履践してなされたものか否かを証明し得ない。そうだとすれば原判決には判決に影響のある訴訟手続違背の違法があると云うの外なく、原判決はこの点において破棄を免れない。

よつて被告人の控訴に対する判断を省略し刑事訴訟法第三百九十七条第四百条本文に則り判決する。

(裁判長判事 下川久市 判事 青木亮忠 判事 鈴木進)

(弁護人の控訴趣意は省略する。)

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